
猫はストレスに弱く、環境の変化などに敏感であることは、飼い主の皆さんはよくご存じかと思います。
猫によってストレスの感じ方やそれに対する反応の仕方は、それぞれ個体差があります。膀胱炎など健康に影響を及ぼす場合や、飼い主さんが気づかないストレスサインを出していることもあります。
“自分の猫はどんなストレスにどんな反応や行動を示すのかを理解すること”は、ストレス対策を考える(=ストレスケア)にあたりとても大切なことです。もっと猫のことを理解したい、という気持ちをもつことはストレスケアの第一歩です。できることから始めてみましょう。
長年、獣医動物行動学の分野において世界で活躍されているダニエル・ミルズ先生にインタビューする機会があり、猫のストレスケアについてお話を伺いました。ストレスケアのアドバイスなどミルズ先生のお話も交えてお話しします。

- 1990年 東京農工大学農学部獣医学科卒、獣医師資格取得
- 2001年 英国応用ペット行動学センターにて研修、公認資格を取得
- 2007年 英国サウサンプトン大学院にて動物行動学を専攻
- 2009年 同大学院卒、コンパニオンアニマル行動カウンセラーの認定資格を取得
- 2013年 獣医行動診療科認定医の資格を取得
- 現 在 V.C.J.代官山動物病院など複数の動物病院にて行動診療を行っている


研究業績を通じて、英国獣医師会では獣医動物行動学治療の初の専門医として認定。 これまでに飼い主向けのガイド本なども含め30以上の書籍を執筆すると共に、200報以上の論文を発表。特に獣医動物行動学におけるフェロモンの使用については25年以上もの間、先駆的な役割を果たしている。


猫のストレスを理解しよう!
ストレスとは何か?

ごはんの時間が近い
食べ物の匂い
空腹を感じる/ソワソワした気持ちになる
食欲を満たすために食べ物を探す/飼い主におねだりをするなど
例えばお腹がすいている時においしそうな匂いがすれば、何か食べたくなり食べ物を探すことがあるでしょう。匂いでお腹がすいたことを自覚し体と心が不安定になったので、食べ物を探して食欲を満たし元の安定した状態に戻そうとするわけです。
このような形で動物に影響を与える刺激のことをストレッサー、不安定になった状態を元の安定状態に戻すために起こる反応や行動をストレス反応と呼びます。猫がストレッサーにうまく対処できない時、猫に悪影響を与えるようなストレス反応や、人間にとって問題行動となるストレス関連行動が起こります。
私たちがよく「ストレス」と呼んでいるものの多くは、嫌悪感、恐怖感、不快感など動物に苦痛を与える刺激を受けた時に、その苦痛で不安定になった体や心の状態を元の安定状態に戻すために起こるストレス反応やストレス関連行動のことを指します。
例えば「満員電車に乗るのはストレスだ」という場合。満員電車でぎゅうぎゅう詰めにされた不快感から、気分が悪くなるといった身体的な反応、身動きが取れなくてイライラするという心理的な反応、その苦痛を少しでも楽にするための行動などを総合して「ストレスだ」と表現しているのです。または満員電車の中で経験する圧迫感・嫌な匂い・空気の悪さ・蒸し暑さなど様々な不快刺激そのものを「ストレスだ」と表現することもあります。
我々は「ストレス」と普段総称して用いていますが、本来はもう少し厳密にそれぞれ区別されています。今回のコラムの中では、ストレッサー(刺激)とストレス反応という二つの要素について、言葉を区別して説明していきたいと思います。
一般的に我々が言っている
“ストレス”
- ・身体的な反応
- ・心理的な反応
- ・苦痛を楽にするための行動
- ・不快刺激そのもの
